Lost in Translation

ロスト・イン・トランスレーション [DVD]
☆☆☆☆☆
せつなさで胸がしめつけられる、いい映画だった。
人は誰もが孤独を抱えていて、それを誰かと共有することで孤独を癒したり、わかちあったりする。
シャーロットとボブは互いに結婚していて、互いに孤独を共有する相手がいるはずなのに、二人とも遠い異国・ニッポンで一人ぼっちになってしまう。シャーロットは夫の仕事にくっついてTOKYOにやってきたけど、夫はFUKUOKAに行ってしまう。間の悪いことに同じホテルに滞在中の頭の軽い女優がカメラマンである夫と仲がいいところを見せ付けた後に。ボブは家族とはなれてTOKYOへ。夫婦仲は「中年の危機」を迎え、マンネリ化している。
その二人がTOKYOで出会った。
英語が先進国とは思えないほど通じないTOKYO。周りは顔の違うアジア人種ばかり。
旅先のホテルでいやがおうでも一人ぼっちの孤独をかみ締めなきゃいけない。しかも、二人は帰るべき「家」との絆が頼りなくなってしまっている。
旅先で一人ぼっちの自分。故郷と離れてしまっている心細さ。
そのせつなさ、さびしさがとてもきれいに、美しく描かれていた。
つかの間TOKYOで自分と同じ体温を持ち、自分と同じ寂しさを持つ人を見つけた二人。この二人がさびしさをお互いに共有できたのは二人とも旅の途中で故郷とのつながりが薄れてしまっていたから。次にあう時は、家族と一緒かもしれない。今しか寂しさは共有できない。このたびの途中でしか。
だからシャーロットは「もう二度と東京には来ない。今回の旅が楽しすぎるから」という。
今しか共有できない孤独。だからこそはかなくて、せつなくて、とても美しい。