河岸忘日抄

河岸忘日抄
☆☆☆
仕事を離れ、フランスでニートを満喫中の主人公が、一度も自力で動いたことのない河岸につながれた船の上で日々たんたんと暮らしていく話。
主人公は本を読みながら、郵便配達員とコーヒーを飲みながら、大家のお見舞いに行きながら、とりとめのないことをえんえんと考える、考える。
どうってことのない話で、物語の起伏はないのに何故か面白い不思議な話。


この話の魅力のひとつに、食べ物がおいしそうに語られているところだと思う。
主人公が淹れるコーヒーに、女の子のために作るクレープ、郵便配達員の女友達のためにつくるガレット、「卵と私」という名の卵を使ってつくるオムレツごとき、そしてプレーンオムレツ。
主人公が読む本で登場するスグリの実や「修道女のおなら」という名のお菓子。
チェーホフ(読んだことないけど)を料理本のように読むなんて視点も斬新。
一冊の本なのに、複数の本やいろいろな音楽が出てきて、この本に深みを増してる感じ。