夜のピクニック 恩田陸

夜のピクニック
☆☆☆☆☆
面白かった。『対岸の彼女』に続いて大当たりって感じ。


朝の8時から24時間ぶっ通しで歩き続ける歩行祭
年1回あるその行事の始まりから終わりまでを描いた作品。


24時間歩き続けるという特殊な環境の中で、そのときの体力や雰囲気に合わせて物語が展開していく。
はじめは誰もが元気に、お昼を食べて軽快なおしゃべり。恋ばなもこのときは夜までにとっておこうと申し合わせて。疲れを感じる夕暮れ時。
でも日の入りに感動して、夜になると不思議と元気になってくる。
そして、夜。明かりが少なくて隣を歩く友人の顔も、気になっている人の顔も見えない暗闇。
誰も見えない暗闇だからこそいつもはできない話もできたりする。
そんな歩行祭だからこそ、甲田貴子は異母兄弟の西脇融と和解しようと自分自身と賭けをする。
やっているときは永遠に続くように思われる行事、でも振り返ってみると実にあっけない。
その一瞬一瞬がよく捉えられていて、ほんのりと切ない。


『貴子の九十九パーセントは、とっととこの行事が終わって、家帰って、お風呂入って、
ばったりとベッドに倒れこむことを切望している。しかし、残りの一パーセントは、まだこの行事が終わらないでほしい、もっと続いて欲しいと願っているのだった。』
っていうところがあー、すごいわかる!
って感じ。学生のころを思い出した。
私は、踊ってるときよく時よとまれ、って思う。
曲は一瞬というか流れたらおしまいだから、音の中にいる自分が自覚できるんだけど、
そんな時「もっと踊っていたい。このまま曲がなり続けて欲しい」って私はよく思う。
流れていくときをとめられないとき、この楽しさが有限であることを自覚するからこそ
その瞬間がとても愛おしいです。