樹上のゆりかご 荻原規子
☆☆☆
匂玉シリーズはあんまり好きじゃなかったんだけど、
なんとなく読んでみた。
イベント大好きな都内の辰川高校で、
生徒会長にずっと思いを寄せていた近衛有理が
鳴海会長を振り向かせるために練り上げた策略に、
生徒会活動に引っ張り込まれた上田ひとみが巻き込まれていく話。
結構面白かった。
文が冗長で目に付くところはあるけど。
学生を卒業して、制服を着なくなったら、こういう「学園もの」って読まなくなるのかなあって
思ってたけど、意外にそうでもないんだね。
ノスタルジーを感じて読んでしまう。
特に江藤君がひとみに「学校の中とはいえ、社会の一部なんだから、
思ったことを全部言うのはよくない」って言われたときに、
江藤君が驚いて、「学校?学校は社会の一部じゃないよ」
「本音を言わなきゃ。おれたちが学生でなくなって、本音で言ったらたたきつぶされる場所へ行く前に」
って言う所が鋭いなあと思った。
実際社会人になっても思っていたほどシビアな世界でもないけど。
私が最近とみに学園ものに我を忘れて読みふけってしまうのは、
現実逃避なのかしら。
社会人になって、仕事して、でもその仕事が超つまらなくて。
残業しなくちゃいけなくて、休日出勤しなきゃいけなくて。
嫌味な上司に目をつけられて、機嫌が悪いたびにねちねち言いがかりをつけられて。
生活をするために働いているはずなのに、仕事をしているせいで生活がつまらなくなってる。
今は、ずっと無気力状態。
樹上のゆりかごって言う題名で「ゆりかご」にちなんでマザーグースの一説が引用されている。
マザーグースって結構恐ろしい歌詞が多いなあと思ってたけど、
近衛さんの解釈は私と違っていて面白かった。
この引用されている歌も、ゆりかごが落ちてしまうんだけど、
近衛さん曰く、「お母さんが受け止めてくれるから大丈夫」
だからマザーグースはお母さんしか歌えない子守唄だったんだ、と思った。
その中にいたときには気づかなかったゆりかごに守られていた学生のころ。
そこを抜け出してからは戸惑いばかりで私は先が見えません。