図書室の海 恩田陸

☆☆

一昔前のドラマXファイルを思い起こさせるようなミステリー調の短編集。
短編なのにその世界観が凝縮されていて、どれも短編で終わらせずに
長編でじっくりと書き込まれたものを読みたいと思わせられた。
少し尻切れトンボのような印象があって残念。

この短編集の中で私が好きなのは「イサオ・オサリヴァンを捜して」
と「ある映画の記憶」かな。
オサリヴァンという名前の響きもなんとなく好きなんだけど、
映画を思わせるような雰囲気がいい。
最後がはしょっちゃってやや強引に終わってしまうところが残念。
男から託されたオサリヴァンが恐怖を感じたときにくわえていた物は本当に骨だったのか？とか、
オサリヴァンが戦っていたものとは何？とか。
これはこれから出る長編｢グリーンスリーブス」の予告編なんだそうだけど、
早く続きが読みたいな。

「ある映画の記憶」も昔の日本の映画をモチーフにしているせいか、
モノクロの映画を見ているような趣のある短編だった。
一色次郎の小説『青幻記』と映画を見てみたいと思った。