蹴りたい背中 綿矢りさ

「箱庭の中を描くような」作品。
山田詠美さんと対照的。


主人公・長谷川はグループに合わすのが嫌で、クラスからあえて孤立した一匹狼的な行動を目指すけど、無理をしている。
人に合わせて笑うのは嫌で一匹狼でいたいなら、周囲の目を気にしなければいいのに、「私は一匹狼でいたいのよ」というイメージをクラスメイトに結ばせるために必死になっているからかえってみじめ。
長谷川みたいに中途半端な行動を取るのなら、中学の友達の絹代のように、「とりあえずの友達」を作って時間を埋めればいいのに。
挙句の果てに長谷川は自分は友達を作らなかったのか、作れなかったのかがわからなくなっている。


長谷川と対照的なのが山田詠美さんの描く登場人物たち。
彼女らは自分の評価基準を確立しているから、その軸からずれた人々(たいていはクラスメイトなどその他大勢)になんと言われてもかまわない。
長谷川もそれぐらい強くなってほしいな。
でもそうすると物語が成り立たないんだけどね。