クジラ島の少女
哀しい映画だった。
パイケアの祖父は最後まで伝統に固執していたから。
パイケアは島の族長の孫娘。
遠くの海からクジラに乗って島にやってきた族長一族の青い血が流れている。
族長は男がなるものだけど、
子供は女の子・パイケアしか授からなかった。
パイケアの父は族長の跡継ぎとしてしか見てくれない父に嫌気がさし、
島を出て行ってしまう。
パイケアは大好きな祖父に認めてもらいたくて
自分が跡継ぎになれることをアピールする。
でも、祖父は女であるパイケアには目もくれない。
とうとう島の長男たちを集めて、次期の族長を育てるため、
伝統を教え始めた。…パイケアを除いて。
パイケアが族長になれないのは彼女が女だから。
自分を認めてくれない祖父にもどかしさが募る。
最後に彼女は実力で祖父に自分を認めさせる。
伝統に革新をもたらせたのは、彼女の実力のおかげ。
最後に二人は和解するけど、
この話で哀しいなあと思ったのは、
祖父が最後まで伝統を追い続けていたから。
祖父は最後にパイケアを族長として認めたけど、
それは彼自身の考えが変わったのではなくて、
パイケアが圧倒的な力を持っていたから。
族長に女がなってもいい、
一人で伝統を支えるのではなく、みんなで助け合えばいいんだという孫娘の
メッセージを本当に受け取ったのではなくて、
彼の心に革新は訪れていなかったんじゃないのかなあ。
パイケアが意識不明で横たわっているところで、
伝統にとらわれて危うくパイケアを失いそうになったことに謝るのではなくて、
パイケアの持っていた族長たる資格に気づかなかったことに
先祖に許しを請うていた祖父の姿が哀しかった。