虹とクロエの物語 星野智幸

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虹とクロエの物語

この人の文は極端って言うかありえない広げ方をするんだけど、その広げ方が好き。
たとえば、
『比喩ではなく、球は言葉だった。私は球の蹴り方を組み合わせることで、面白い冗談が言えた。クロエはときどき、笑いすぎて私の球を受け損ねた。…
クロエはクロエで、リフティングで即興詩を詠めた。締めの言葉球がこちらに届くとき、私は感動のあまり泣いていたりした。…
 私たちだけの言語だった。世界は私達だけの言語によって、リズムに変換された。私たちは、いつでもリズムに刻まれていた。…
 だから、私もクロエも、学校社会の文脈になど寄り添わずに過ごせたのだ。』


吸血鬼として島に幽閉されたユウジ。
そのユウジとの子供を20年身ごもったままのクロエ。
クロエの大親友だった虹子。


強いつながりでつながれた3人だったのに、お互いに音信不通になった20年間。
その20年のうちに虹子は大衆にまぎれ、クロエは結婚せず自分の道を追い求め、
ユウジは孤島で世間に反逆し続ける。


失われた20年を取り戻すきっかけはクロエと虹子に届いた同窓会の招待状。


学生時代に思い描いた夢、とんがって生きると思っていた自分。
しかしいつしか丸まって社会のなかで普通に生きていくようになっていく。
ギャップの20年間。
クロエはユウジを想い、とんがり続ける。
虹子は結婚し、大衆に埋没する。
その差。

その埋めがたい差を埋めることはできるのか。

普通に生きることの苦悩、現実。
世の中思うように生きていくのは難しい、と思った。
これは現在の私の心境をうつしているだけ!?