手紙 東野圭吾

☆☆☆
手紙

最近東野圭吾さんづいてますね。
早く白夜行が読みたいです。


この本は『ゲームの名は誘拐』と違って感動させる本でした。


弟の大学への進学費用を工面するために強盗をし、家人に見つかったことから目撃者を殺してしまった兄・剛志。
まじめで頭もよかった弟は、強盗殺人犯となった兄の存在に一生を狂わされる。
あきらめなくてはならなかった大学進学・就職難・恋人との別離。
しかし、月に1回だけ送られることを許されている兄からは毎月1通の手紙が絶え間なく送られてくる。
相変わらず弟のことを想う兄・その優しさと世間からの差別で板ばさみになる弟。
しかし、世間からの差別が自分の娘にも及んでいるということに気づいた弟は、
兄と絶縁することを決断した。
兄へ出す最後の手紙で、弟は今まで語らなかった自分が受けてきた苦しみ・差別を語る。
そして、これら受刑者の家族が受けた苦しみを知ることも兄が受けるべき罰なのだと。
それを知った兄は、自分の存在そのものが愛してやまない弟を苦しみ続けていたと、
善意の結晶であるはずの手紙が自己憐憫・自己満足に過ぎなかったことに気づき、苦悩する。
苦悩の果てに、弟は兄がいる刑務所の慰問コンサートに歌手として参加することにした。
そこで出会った二人は…


重い話だった。
人間とは一人で生きているものではないということ、を改めて実感した。
弟が勤める会社の社長が、「受刑者の家族が差別を受けるのは当然だ。自分の愛した家族が自分のせいで苦しむのを知るのも受刑者の罰だからだ」といった趣旨の話を弟に諭すシーンでは、そういう考え方もあるのかと思った。
一方で受刑者の家族も被害者だって言う考えもあって、賛否両論でどっちが正しいって言う議論ではないんだろうな、とも。