野ブタ。をプロデュース 白岩玄

ブラックでおもしろかった。
文中に（笑）が多用してあるところがなんか斬新。

修二はクラスで人気者。
周りの感情を把握するのに長けていて、
絶対に雰囲気を壊さない、ムードメーカー。
頭、外見ともにかっこよく（彼女つき）の高校生。
でも彼は、本当に好きな人はいなくて、
友人も時間を埋める存在でしかない。
彼は頭がいいから、テキトーに周りをあしらうことで
充実したと(周囲からは）思われる高校生活を送ってる。

そこに野ブタならぬ信田（のぶたと読まずにしんたと読む）が転校してくる。
太っててシャイなノブタはあっという間にクラスから無視の対象になるけど、
修二はそんな彼をプロデュースしてクラスの人気者に仕立て上げる。

そのプロジェクトは成功したんだけど、
友人が不良に絡まれているところを無視してしまった修二は
友人にその話を暴露されることでクラスの人気者の座から落とされ、
一気に嫌われ者に。

その時に彼はやっと今まで自分が芝居をして表面上でしか
人と付き合っていなかったことを
回りもうすうす気づいてきたことに気づく。

でも、この本では彼はそこで自分の本心を友人にさらけ出すなんて
「カッコ悪い」ことはしなくて、
転校することで、自分のプロデュースを一からやり直すことを選択する。

彼はたぶんそうやって自分の本心を誰にも見せないまま
表面上の付き合いしかしないで一生を過ごすんだろうけど、
それじゃ人は幸せにならないような気がする。
何かあったときに何かを分かち合えるような人がいないと私はつらいなあ。

でもこの本ではそんなことは考えちゃいけないのです。
人生はあくまでも「楽しく」「スマート」に。
下手に他人を理解してぐちゃぐちゃでどろどろした人間関係に
巻き込まれることは修二くんにとっては愚かとしか思えないのです。

筆者はそのことをわかっててあくまで修二に今までの人生を続けさせてる
ように感じられるところがブラックな小説だと思いました。