東京タワー 江國香織

東京タワー
☆☆☆
江國香織さんの小説は当たりはずれがあると思う。
それは多分江國さんの小説の質ではなくて、私と感性があっているかどうかなのだと思うけど。
江國さんにとって「恋とは、するものではなく、おちていくもの」
本当にその言葉通り、自分の感情がおちていく限り、何もしないで感情どおりに行動してしまう登場人物達に対して私はときに苛立ちを感じてしまう。


この小説は、年上の恋人を持つ男の子2人の話。
一人の女性をじっくりと、自分の人生もかけて愛す徹と、女性のタイプに合わせて自分の肉体的欲求と精神的充足を満たす女性を使い分けて「要領よく」複数の女性たちと付き合う耕二。
その二人の対比が面白かった。
でも、最後が「そこでおわりなの?」見たいな終わり方で、ちょっと納得がいかない。それ以外はすごく面白かっただけに残念。


耕二と徹の違いは、「他人の目を気にするか、しないか」だと思う。
耕二は『野ブタ。をプロデュース』の修二に似てる。
耕二は「人と付き合うってこんな感じ」っていう周りのイメージにそって恋をするふりをしていて、本当は複数の女性の誰をも恋してはいなかったんじゃないかな。
本人は結構本気で好きなんだろうけど、自分をさらけ出すのが怖くて、打算とかを計算に入れて頭で恋をするタイプなんだと思う。自分のプライド、周りからのイメージを守るべき何かを持っている、本当は心のガードが高い子なんだよね。
一方の徹は一見とっつきにくそうだけど、愛する人に対して自分をすべて捧げられる人。周りにとっては不倫としか思えなくても、「恋におちてしまった」彼にとって周りの批判なんてどうでもいいこと。


そしてこの二人の恋の仕方が、一見内気で、まじめな徹が恋に落ちていくままに、なりふり構わず行動するのに対して、一見情熱的で社交的に見える耕二が表層的な恋しかできないっていう意外さが面白かった。


でも、まじめな人はまじめだからこそ心のブレーキが効かずに、突っ走ってしまうのかもしれないね。